健康診断の当然として行われるバリウム検査(胃部X線検査)は、日本では広く普及しています。記事では、バリウム検査の意義やその限界について詳しく解説し、本当に不要なのかを検証します。
1.バリウム検査とは?
バリウム検査とは、X線を使った胃の検査方法の一つです。検査の流れは以下のようになります。
- 発泡剤を飲む– 胃を膨張させるための薬剤を飲みます。
- バリウムを飲む– 白い粉末状または液体状の造影剤を飲みます。
- Xline撮影– 体を様々な方向に移動しながらXlineを撮影。
バリウムは胃の内壁に付着し、X線で胃の形や異常を観察しやすくします。主に胃がんや胃潰瘍、ポリープなどの異常を発見するために行われます。
2. バリウム検査のメリット
バリウム検査のメリットは以下のとおりです。
2.1. 低コストで広く普及している
バリウム検査は内視鏡(胃カメラ)に比べてコストが低く、多くの医療機関で受けられます。そのため、大規模な健康診断でも利用されやすいという余裕があります。
2.2. 短時間で検査可能
内視鏡検査は挿入や観察に時間がかかりますが、バリウム検査は比較的短時間で終了します。 特に企業の健康診断では、多くの人が短時間で参加できるため、効率的です。
2.3. 胃全体を一度に撮影できる
X線を置くことで、胃の全体像を一度確認できるため、胃全体の形状の異常や大きな病変があるかどうか分かりやすいと言われています。
3. バリウム検査のデメリット
バリウム検査のデメリットは以下のとおりです。
3.1. 精度の低さ
バリウム検査の最大の問題点は、精度の低さです。 特に、初期の胃がんを発見する能力が低いことが指摘されています。 バリウム検査では胃の粘膜表面に微細な異常を詳細に確認するできません。
実際、日本消化器がん検診学会のデータでは、バリウム検査の感覚(病気を正しく検出する能力)は約50~60%とされており、見落としが発生する可能性があります。検査の感性は90%以上とされており、より正確な診断が可能です。
3.2. 放射線被ばくのリスク
バリウム検査ではX線を使用するため、放射線被ばくが起こります。
特に、若年層の人々にとっては、不要な放射線被ばくは可能な限り避けるべきであり、内視鏡などの代替手段を検討する価値があります。
3.3. 検査後の副作用
バリウム検査後に便秘がある場合があります。 バリウムは体内に残ると覚悟して、水分を多く摂取しないと腸閉塞のリスクも生じます。 高齢者や便秘が多い人には注意が必要です。
4. バリウム検査は本当に意味がないのか?
バリウム検査は本当に意味がないのでしょうか?
4.1. 胃がん検診としての有効性の低下
近年の研究では、バリウム検査による胃がん死亡率の低下効果が限定的であることが指摘されるようになりました。
そのため、国際的にも胃がん検診の主流はバリウム検査から内視鏡検査へ移行しつつあります。例えば、アメリカではバリウム検査はほとんど推奨されません。
4.2. 代替手段の存在
バリウム検査が唯一の選択肢だった時代とは異なり、現在は以下のような検査方法が利用可能です。
- 胃内視鏡検査(胃カメラ):より精密に胃の状態を確認できる。
- ヘリコバクター・ピロリ検査:ピロリ菌の存在を確認し、胃がんリスクを評価。
- ペプシノゲン検査:胃粘膜の状態を血液検査でチェックします。
特に、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療が胃がん予防に有効であることがわかっており、バリウム検査よりもピロリ菌検査の方が意味があると考えると医師も増えています。
5.では、バリウム検査は廃止すべきなのか?
バリウム検査には確かに限界がありますが、以下のような場合には一定の意義があると考えられます。
- 内視鏡検査を受けられない人(内視鏡の挿入が難しい人、医療機関の設備が整っていない地域など)。
- 検査が苦手な人(内視鏡に比べてバリウム検査の方が楽だと感じる人もいる)。
- 短時間で多くの人を検査する必要がある場合(大規模な職場健診など)。
しかし、可能であれば、より精度の高い内視鏡検査を選択するのが先決です。
まとめ
バリウム検査のメリット
✔短時間で検査できる
✔低コストで広く普及している
✔胃全体の大きな異常を発見しやすい
バリウム検査のデメリット
✘ 胃早期がんの発見率が低い
✘ 放射線被ばくがある
✘ 便秘などの副作用のリスク
結論
「バリウム検査は全く意味がない」とは言い切れませんが、内視鏡検査の方が圧倒的に精度が高く、胃がんの早期発見には適していると言われているが最新の医学的な見解です。
むしろ、胃がん検診の主流は内視鏡検査やピロリ菌検査に移行していくと考えられます。 可能であれば、バリウム検査ではなく内視鏡検査を受けることを推奨します。